トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談、両首脳のは北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化取り組みアメリカが体制保証を約束するとした共同声明に署名しました
ただ共同声明はいつまでにどうやって非核化を実現するのかが盛り込まれず非常に具体性の乏しいないようになりました
こうした中で北朝鮮の核の脅威にさらされてきた日本はどう対応すべきか、そして拉致問題を解決するためにどう動くべきか、今夜は今回の米朝合意の評価と今後の日本外交のあり方について考えます
昨日シンガポールで行われた米朝首脳会談両首脳が署名した共同声明のポイントで
すトランプ大統領は北朝鮮に対して体制の保証を提供する約束をしても委員長は朝鮮半島の完全な非核化について断固として揺るがない決意を示した両国は朝鮮半島に永続的で安定した平和の体制を構築するためともに努力するなどとなっています
これはアメリカが朝鮮戦争以来の北朝鮮への敵視政策を辞める意思を表明したのに対し長年核兵器の開発を続けてきた北朝鮮がそれを将来的に放棄する意思を表明したということです
その一方でアメリカが求めてきた完全で検証可能かつ不可逆的な非核化という文言は盛り込まれませんでした
又焦点だった非核化を実現する時期や具体的な行動や現象方法では合意できず今後の高官による協議に委ねられました
これについてトランプ大統領は記者会見で時間が足りなかった私はここに一日しかいないと述べ突っ込んだ議論に踏み込めなかったことを認めました
その上で完全な非核化には時間がかかるそのプロセスはすぐに始まると強調しましたがやはり非核化に向けた具体的な行動や現象方法についての言及はありませんでした
アメリカのメディアからは階段の成果を疑問視する報道が相次いでいます
ウォールストリートジャーナルはアメリカが長年求めていたはずの完全で検証可能かつ不可逆的な非核化を実現するプロセスはほぼ含まれていないとし、 CNN も過去の北朝鮮問題に関する声明と比べても驚くほど弱いと批判しています
これとは対照的に北朝鮮の国営メディアは会談の成果を文字通り誇示しています
朝鮮労働党機関紙労働新聞は今日会談の結果を始めて報道し、新しい米朝関係を樹立したとその意義を評価しました
その上で朝鮮半島の非核化を成し遂げる過程で段階別の同時行動原則を遵守することが重要だという認識を共にした、トランプ大統領が米朝対話が続く間は米韓合同軍事演習を中止する意向を表明したと伝えました
つまり北朝鮮は自らが主張してきた段階的な非核化をアメリカに飲ませ米韓合同軍事演習の中止を勝ち取ったと考えているのです
今回の首脳会談を経て北朝鮮問題をめぐる局面は圧力から対話へとシフトしつつあります
トランプ大統領は来週にもポンペイを国務長官とボルトン大統領補佐官が北朝鮮側と協議するという見通しを示しています
ただ、非核化プロセスをめぐる課題は山積しています
完全な非核化を実現するためには北朝鮮に全ての関連施設を正確に申告させ国際機関による査察を受け入れさせる、核兵器や関連部品製造工場など一切を廃棄しプルトニウム濃縮ウランなど各関連物質を国外に搬出する、こうした措置が確実に行われたどっかどうかを検証する、そしてこうした作業に期限を設ける、これらを一つ一つ詰めていかなければなりません
悪魔は細部に宿る
交渉には相当な困難が伴うでしょう
日本はどうすべきでしょうか?
私は今後の交渉には北朝鮮の核の直接的な脅威にさらされてきた日本こそが積極的に関与する必要があると思います
非核化のプロセスには査察や核物質の搬出核施設の解体から見返りの経済支援まで多額の資金が必要です
トランプ大統領は非核化に要する費用は日本と韓国が支援すると述べていますので日本もその負担を求められることになるでしょう
日本としては負担だけを求められ当事者として意見をいう場には関与できないというのが最悪の展開です
アメリカに対しできるだけ早く当事者になる意思を伝えるべきでしょう
日本が主導してかつての6カ国協議の枠組みを復活させることやその枠組みを活用した外相会議を提唱することも検討すべきでしょう
そして日本にとって決して忘れることができない大事な問題が拉致問題です
トランプ大統領は今回拉致問題は安倍総理にとって大事な問題だ、この問題を提起したと述べました
その上で共同声明には記されなかったが彼らはこの問題に取り組んでいくことになると述べました
拉致被害者横田めぐみさんの母親の早紀江さんは奇跡的なことが起きたという思いでよくここまできたなと感じていますと語りました
一方拉致被害者の家族会の代表の飯塚繁雄さんは安倍総理は日本政府には解決に向けた具体的な動きを早急に考えて欲しいと求めました
確かに米朝首脳会談でトランプ大統領が提起したからといってそれで拉致問題が解決するわけではありません
安倍総理も最終的には私と金正恩院長の間で解決をしなければならない問題だと決意していると日朝首脳会談に強い意欲を示しています
しかし日中首脳会談には拉致問題を政権の最重要課題と位置づけてきた安倍総理だからこその難しさがあります
2014年北朝鮮が拉致被害者の消息を再調査するとしたストックホルム合意は北朝鮮が一方的に中止を通告してきました
日朝協議を再開するにしても日本はまず拉致問題は解決済みという北朝鮮の方針を変えさせることから始めなくてはなりません
そして北朝鮮に再調査をさせたとしても再び厳しい結果を突きつけられる可能性も否定できません
一方で北朝鮮に対する強硬姿勢で世論の指示を受けてきた安倍総理にとって拉致問題で妥協したと受け取られることは絶対に避けたいはずです
日朝首脳会談を行うのであれば拉致問題で日本の世論が納得できるだけの成果がなければならない、しかし北朝鮮の出方は予断を許さない、そこにあれ総理の政治的ジレンマがあります
ではこうした状況を日本はどうすればできるのか
日本にとって最大のカードになり得るのは経済支援です
日朝平壌宣言に基づき拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決し国交正常化を早期に実現する
そして国交正常化と北朝鮮に経済協力を行うというのが日本政府の立場です
裏を返せば日本は拉致問題が解決しない限り経済支援はできません
このことを北朝鮮に改めて理解させ拉致問題に真剣に取り組ませるためのインセンティブとして最大限に活用する、こうした一種のしたたかさが必要でしょう
日本外交に今求められているのは戦略的思考に裏打ちされた構想力とそれに基づく大胆な実行力だと思います