日銀が大規模な金融緩和を始めて今日で5年。
今月9日には黒田総裁の二期目が始まります。
1期目の5年間、黒田総裁はひたすら金融緩和の道を走り円安、株高そして景気の拡大を支えてきました。
しかし次の5年は厳しいいばらの道となりそうです。
今日は2期目に入る黒田日銀の課題について考えてみたいと思います
こちらが新しい執行部
黒田総裁は再任です
そして新しい副総裁には元早稲田大学教授の若田部氏と元日銀理事の雨宮氏が先月就任しています
黒田総裁は2年程度で2%の物価上昇率を実現すると断言した当初の目標を未だに達成していないのに再任です
そして金融緩和に積極的な学者と日銀の内部からの昇格という副総裁の構成もこれまでと変わりません
この顔ぶれからは2%の達成はともかくこれまでの金融緩和を続けて円安、株高そして景気拡大の流れを止めないでほしいと言う安倍総理大臣の期待が見えてきます
しかし異例の大規模な金融緩和が長引いていることで日銀は今その限界と副作用に直面しています
まず限界です
黒田総裁は5年前に就任して以降金融緩和の矢を次々と放ち世の中に出回るお金の量を大量に増やしました
しかしこれだけやっても物価は直近の2月でプラスの1パーセント、2%の物価目標の達成見通しは6度も先送りされこの先も目標達成は難しいという見方が広がっています
そしてこれ以上の緩和の余地もほとんど残されていません
結局壮大な実験の結果金融政策で物価を上げるのには限界があることが明らかになっただけそう言い切る経済の専門家は少なくありません
一方預金の金利がほぼゼロで預金に頼るお年寄りの生活に影響が及んでいますし、地方経済を支える地方銀行は利ざやが縮小し利益が急激に減っています
銀行が店舗を減らしたり手数料を引きあげたりする動きも広がっています
日銀が大量の株式を買うことで株価を日銀が支えているという市場の歪みも指摘されています
さらに利払いの負担が減ることで国が安易に借金を増やす要因になっているという指摘も強く上がっています
異例の政策が5年も続いていることでこうした副作用が膨らんでいます
景気拡大は戦後2番目の長さになって失業率も25年ぶりの低い水準が続いています
景気がいいのに危機対応のはずだった政策
しかもこれだけ副作用の懸念が膨らんでいる政策をいつまで続ける必要があるのでしょうか
そもそも達成がほとんど難しいと見られている2パーセントの物価目標にいつまでこだわるのか考え直すことも必要です
政府がデフレ脱却宣言をするかどうかは別にして現状を見るともはやデフレとは言えません
生活する立場から見ると賃金がなかなか上がらない中2パーセントの物価が上がると生活が厳しくなると感じる人も多いでしょう
2パーセントの目標は残すにしても中期的な目標くらいの位置づけに変えることも検討すべきではないでしょうか
そしてその達成前にでも異例の金融緩和をやめる、いわゆる出口の方向に向けて少しずつ政策を変えていく、具体的には国際や ETF の買い入れ額を減らしたり長期金利の誘導目標が今0%になっていますがその水準を引き上げたりといったりということを検討する時期に来ているのではないでしょうか
現実に日銀は水面下では一部金融緩和の動きを止めているという見方があります
こちらは日銀が持っている長期国債が前の年の同じ月と比べてどのくらい増えているか、つまり日銀がどのくらい国際を買い増ししているかを示したグラフです
黒田総裁の就任後急速に増えましたがおととし9月から着実に減っています
日銀はこの時点で長期金利を0%程度にするという手法に軸を移したためで意図的に購入額を減らしているわけではないとしています
しかし、これは事実上の出口に向けた動きだと見る専門家は少なくありません
ただ日銀が今後本格的に出口に向けた動きを進めていくのはそう簡単ではありません
乗り越えなければならない課題がいくつも待ち受けています
まず日銀が明確に購入する株式や国債の量を減らして行くとなると株価が暴落したり金利が上がったりまた急激な円高になったりと市場が大きく混乱する心配が出てきます
そうならないように市場とうまく対話ができるのかというのが一つ目の課題です
黒田総裁はこの5年市場の裏をかくようなサプライズの手法を取ってきましたので市場は日銀の言うことをそのままには受け止めなくなっています
しかも金融緩和の枠組みは今では非常に複雑な立て付けになっていてどこをどういじったらどのような影響が出るのか専門家でも分かりにくくなっています
市場の大きな混乱を招かずに出口に向かうのは非常に難しいとみられますがそれだけに早い段階から日銀の考えや政策の意図について丁寧にそして真摯に対話を進めることが欠かせません
二つ目は景気悪化への懸念です
アメリカのトランプ大統領が打ち出した保護主義的な貿易政策の影響への懸念などからおととい日銀が発表した短観では代表的な大企業の製造業の景気判断が2年ぶりに悪化しました
世界的にまだ景気拡大が続いているので大丈夫という見方が強くはありますがもし今後頼みのアメリカ経済がおかしくなったり円高が一気に進んだりするようなことがあると日本経済への影響は避けられないでしょう
また来年の10月には消費税率の引き上げ2020年には東京オリンピックパラリンピックが予定されていてその後の景気への影響も懸念されています
今のまま景気が悪化すると日銀は出口に向かう所かほとんど余地のない追加の緩和に追い込まれ副作用が社会的な混乱を引き起こすて熱が出てきます
そうなる前に出口に向かう道筋を描くことができるのか黒田総裁の手腕が問われることになります
最後に世の中がここまで低金利金融緩和に頼ってしまうとそれを止める方向に向かうには政治的には反発が起きることが予想されます
しかし今の金融緩和をいつまでも続けることはできません
福作用の懸念から目を背けず長い目で見て日本経済のために何が求められるのか二期目の黒田日銀は国民にも丁寧に説明をしながら経済情勢を見極め必要な時には毅然と政策を進めるそうした姿勢も問われることになりそうです