大晦日に東京で食べる年越しそばなら十割そばにこだわりたいですね。年越しそばは縁起を担いで、厄を断ち切るために切れやすいそばを食べるという説があります。切れやすいといえば十割そばが小麦粉をつなぎにつかっていないため最適です。東京には立ち食いなのに安くてお美味しい十割そばの店舗がいくつもあります。
目次
なぜ年越しにそば (Why)
日本の古くからの風習というのは、実は江戸時代ぐらいのものがほとんどらしいですが、年越し蕎麦についてもやはり江戸時代のようです。
”江戸患い”呼ばれた”脚気”という病で、昭和の初期ぐらいまでは死者が出ていたそうです。
脚気の症状は、倦怠感で寝込んでしまって最悪は心不全で命を落とすという感じだったようです。
この脚気の原因は、今の時代では考えられないですがビタミンB1不足だそうです。
ビタミンB1は、蕎麦に多く含まれているため、江戸時代に蕎麦を食べると脚気にならないということがあり、その結果として蕎麦自体が流行ったようです。
その流れが、年末の年越し蕎麦になったようです。
ところで、縁起を担いで年越し蕎麦を食べる目的は3つほどあります。
厄を断てる
蕎麦が他の麺類より切れやすいため、「今年一年の災厄を断ち切る」ということで年末に断つのが目的というものです。
江戸時代の蕎麦が、十割だったのか小麦粉でつないでいたのかどうかは不明ですが、今の時代は蕎麦が切れやすいとは誰も思いませんね。
そういう意味では、既に断つのを目的とした縁起担ぎにはそぐわない気もしますね。
十割蕎麦なら、小麦でつないでいるそばに比べれば切れやすいので、縁起を担ぐなら十割蕎麦にしてもらいたいです。
十割そばと言えば、東京にもいくつか立ち食いのお店がありますね。(後述)
ところで、大前提となる年末を区切りとする話ですが、厄関係の切り替わりは節分だという話もあるので年末は時期としてはどうなのかという話もあります。
健康にいい
江戸患いの脚気対策から来ているのでしょうが、昔から蕎麦は身体によいものとされています。
そこで、純粋に、新年を健康で迎えるために、大晦日に蕎麦を食べたという説です。
これは縁起でも何でもなく、普通の健康法ですね。
長寿・金運願い
蕎麦は、見た目が細く長いため健康で長寿への願いがあったようです。
また、職人が金粉を集めるのにそば粉を使ったことから金運がよくなると言う伝えがあったそうです。
ところで、健康・長寿については、直後のお正月のおせちの方でやる訳ですからやはり(1)の厄断ちの方が有力かもしれないですね。
年越し蕎麦をいつ食べる (When)
食べるタイミングの縁起としては、最高の縁起物にするには、年を越すギリギリのタイミングに食べ始めて年内でキッチリ食べ終えるのがいいようです。
特に、年内に厄を断ち切る縁起を担ぐ場合は、年を越して食べないようにするというのがあります。
つまり、年内で断ち切り完了状態にしないと逆に縁起が悪いということでしょう。
別の縁起としては、残すと金運に恵まれなくなるので蕎麦を食べ残してはいけないというのがあります。
どちらの縁起もどうでもいいような気がします(笑)
あまり気にせずに、除夜の鐘を聞きながら年を越しながらのんびり食べてもいいのではないでしょうか?
そんなに年越しのタイミングが恐いのであれば、ギリギリに食べずに夕食で食べればいい話です。
年越し蕎麦をどのように食べる (How)
特に、年越し蕎麦仕様の食べ方はありません。
ちょうど、新そばの季節なので、”もり(ざる)”で食べるのが蕎麦の風味を味わえて良いのかもしれません。
ただ、新そばをありがたがるのは、保存技術が未熟だった昔の名残に過ぎません。
今は、通年で味の差がない蕎麦が食べられるようになっています。
もちろん、それでも収穫直後の新そばの方が美味しいわけですからありがたく味わえばいいでしょう。
ちなみに、秋の新そばは11月上旬ぐらいからで、それを年内に食べると新そばと呼ばれるそうです。
縁起を担いで、蕎麦をブチブチと切りながら食べたいなら熱い汁のどんぶり蕎麦の方がいいかもしれません。
年越し蕎麦をどこで食べる (Where)
年越し蕎麦をイベントと考えるなら、有名なお蕎麦屋さんの行列に並んで食べるのもいいかもしれません。
よくテレビで中継されている麻布十番の「更科堀井」や神田の「神田まつや」なんかどうでしょうか?
ちなみに、東京で気軽に”十割そば”を食べるなら立ち食いがお勧めです。
「嵯峨谷」、「さ竹」が私のお勧めです。
「嵯峨谷」は、渋谷の東急百貨店の前にもありますが安いのに本格的な十割そばです。
「さ竹」は、恵比寿駅の駅前にあります。
東京には、各所に「嵯峨谷」「さ竹」の店舗があります。(店舗はググってもらえば食べログですぐに見つかります。)
蕎麦三昧のフルコースな日にするなら、お昼から夕方に外で食べて、夜は自宅でスーパーで茹でたてを買って食べるがいいかもしれないです。
どんな年越し蕎麦を食べる(What)
そばの種類として、江戸三大蕎麦としての「藪」「更科」「砂場」があります。
そば粉は、一・二・三番粉に挽く分けられます。
一番粉は、そばの実の中心部分が粉になったもので、色が白く更科そば粉と呼ばれます。
二番粉は、胚乳部や胚芽部が粉になったもの。
そして、三番粉は、外側の殻付近から粉になったもので、一番色が濃く藪粉と呼ばれます。
「藪」「更科」「砂場」ごとに、これらのそば粉の割合を調整して特徴を出しています。
当然、一番粉を主に使うのが更科で、三番粉を多く含めるのが藪ということになります。
更科系の白っぽい蕎麦の方が上等に感じますし、事実”殿様そば”と呼ばれているようです。
ただ、栄養面を考えれば当然殻がそば粉に含まれている藪系の方が圧倒的に高い訳です。(香りも蕎麦の香りが高い)
「藪」
特徴は、細いそばでタレが辛いです。
つけダレが、塩っ辛いのでそばの先だけ付けて食べていたのが藪そばの特徴です。
よく”通”ぶっている人が、どんな蕎麦でも先だけツユにつけて食べていますがこれは間違いです。
藪そばは、その黒っぽい色から”田舎そば”と呼ばれますが、その対極にあるのが”殿様そば”とも呼ばれる更科になります。
「更科」
発祥は信州ですが江戸そばです。
特徴は、白くて細くタレは甘いです。
「砂場」
大阪生まれで歴史的には一番長いですが、これも江戸御三家のそばです。
藪や更科に比べると特徴がないのが特徴かもしれません。
事実、タレはやや甘めの中間です。
一番粉だけを使った白くて細い麺という話もありますが、今の砂場そばとはちょっと特徴が一致していない気がします。
田舎そばでもなく、白いそばでもなく、ツユも極端に辛くなく、結果的には砂場が最も一般的な江戸蕎麦なのかもしれないです。
お好きなそばをどうぞ!
大晦日を年越しそばイベントの日と考えて、「藪」「更科」「砂場」の中で昔のながらの作り方や味を守っている店を探してみるのも面白いかも。
ちなみに私のお勧め十割そばの「嵯峨谷」、「さ竹」は、「藪」「更科」「砂場」のどれとも謳っていません。分類すれば「砂場」かな。